銀行に金を貸す

担保を取る 銀行の建物は立派 銀行の倒産 本当の担保 金融業のプロ 服装で人を判断

「あなたは銀行に金を貸したことがありますか」と質問すれば、大抵の人は「私は銀行に金を貸す程の金持ちではありません」と答えが返ってくる。 しかし、少し考えて見てほしい。 あなたも銀行に少々は預金をし、利子を受け取っているでしょう。 それなら明らかに銀行に金を貸しているのである。 この場合金額の多寡は問題ではない。 あなたが銀行に金を貸し、銀行はあなたに利子を支払っているのだから。

そこで一つ問題がある。 それはあなたが銀行からお金を借りる時には、銀行はあなたから担保を取るのに、あなたが銀行に金を貸した時に、あなたは銀行から担保を取っていないことである。 それはなぜか。 銀行の建物は大きく立派であり、その中には沢山のお金があるために信用される。 それに比べてあなたの家は小さく貧弱であり、その中には銀行ほどのお金がないため、信用されないのである。 これが世間の常識であった(敢えて過去形で言おう)。

しかし、ここでもう一度よく考えて見る必要がある。 銀行の建物やその中にあるお金は頭取のものではないし、ましてや銀行員のものではないので、いざと言う時も勝手に売り払ったり自由に使う訳にはいかない。 一方、あなたの家やあなたの財布の中のお金は自分のものだから、いざと言う時には勝手に売り払ってお金に代えたり、自由に使うことができる。 小さいとは言え自分の持ち物は、大きくても他人の持ち物より上である。

過去4,50年間、日本では銀行は破産することがなく、絶対の信用を誇ってきたが、ここに来てその信用が揺らいできた(明治、大正時代には銀行の倒産があった)。 もう一度原点に立ち返って見直してみる必要がある。 誰が誰に金を貸しているか、どの担保が本当に信用できる担保なのか。 バブルの時代、銀行は見かけだけの本当は値打ちのない担保(土地)に金を貸して、現在の膨大な不良債権を抱え込んでしまった。 本当の担保は確実に金に換えられる物でなければならないのに、見かけ倒しの担保に目が眩んでしまった。

その昔、シェークスピアの「ベニスの商人」に出てくる金貸しシャイロックは、金に換えられるはずのない商人の肉1ポンドを担保に取って金を貸してしまった。 同じ失敗を現代の銀行マンも犯してしまったのだ。 銀行員は自分達を金貸しとは思っておらず、もっとスマートな金融ビジネスマンだと思っているかも知れないが、本質的には昔からの金貸しそのものである。

大手都銀の人間には、客を見下す様なタイプが間々見受けられる。 下の方ほどその傾向が強い。 窓口の女性にも多い。 その点地方銀行の方が腰が低い。 以前こんなことがあった。 私の口座の預金が少なくなり、今月分のカードの引き落としが出来なくなる恐れがあったので、振り込みに行った。 生憎大手都銀の口座であった。 その時たまたま自分の預金通帳も銀行カードも持っていなかった(勿論口座番号など記憶していない)。 そこで窓口の女性に私の口座のある支店名(同じ都銀の別の支店)と名義を告げて数万円の振り込みを依頼した。

女性行員曰く 「口座番号が分からなければ振り込みできません」

私 「それなら支店名と名義から口座番号を調べてほしい」

行員「口座番号は教えられません」

私 「口座番号は教えていらない。 あなたが調べてこのお金をその口座に振り込んでくれれば良い」

行員「名義人が確認できませんので振り込みはできなせん」

私 「?? 」

私 「他人の口座にわざわざお金を振り込む人はいないでしょう。

わたしはお金を引き出したいと言っているのではない。 入金したいと言っているのですよ」

行員「暫らくお待ちください。 上司と相談してきます」

結局振り込める事になったが、こんな簡単な話がなかなか通じないのが銀行窓口である。

こんな事もあった。 住宅金融公庫に融資を申し込んだ時のことだったと思う。 会社を休み(彼らはサービス業にも係らず土日には仕事をしない)大手都銀の窓口に面倒な書類を何枚も提出して、やっと受付をパスした。 ところが2、3ヶ月も経ってその都銀から手紙が届き、「提出書類に不備がありました。 ○月○日までに○○の書類を提出して下さい。 期限に遅れるとこの申請は無効になります」、と言う。 馬鹿なことを言うな。 私は早速都銀の窓口に文句を言いに行った(また仕事を休んで)。

私 「何ヶ月も前にそちらの要求通りの書類を提出したではないか。 なんで今頃こんなことを再度要求するのか」

行員 「住宅金融公庫からそう言ってきましたので」

私 「あなたも金融業のプロだろう。 住宅金融公庫の説明書を見て要求通りの書類を揃えたではないですか。 あなたもそれを納得して受理したでしょう」

行員「そうです」

私 「それならどうして”説明書通り書類は揃っているはずだ”と住宅金融公庫に押し返さないのですか」

行員 「 . . .」

私 「それに済みませんの一言もなくいきなり、○月○日までに追加書類が提出されないと申請は無効となります、と一方的に言ってくるのは失礼でしょう」

そんなやり取りがあった後、銀行側は上司の融資課長が謝って、私は追加書類を出し、一件落着となった。 まだ、似たような例はあるが、バカバカしいので止めにする。

もう一度いうが、銀行の立派な建物に騙されてはいけない。 あれは他人のお金で出来た建物だ。 更にもう一つ、銀行にいく時は(特に交渉ごとで行く時は)なるべく立派な服装をしていくことだ。 彼らは服装で人を判断する習性があり、みすぼらしい人には高飛車に出、立派な見なりの人には低く出てくるから。