人口減少とルネッサンス2002.5)

高齢者が増加 少子高齢化を危惧 イタリアの人口 暮らしに余裕 ルネッサンスの文化

 

2002.3.26発表の国立社会保障・人口問題研究所の予測では、2000年から2030までの間に、日本の人口は全体で950万人減少するが、65歳以上の高齢者は1270万人も増え、64歳以下の人口は何と2200万人余減少する、と言う。

このことから少子高齢化を危惧する意見が喧伝されている。

 

一方、湯浅赳男著「文明の人口史」新評論社には以下に示すような興味深い見方も出ている。

 

西暦1340年のイタリアの人口は930万人であったが、それが1500年には550万人に減少した。

人口減少の原因は、黒死病(ペスト)の蔓延と気象の寒冷化などであった。

人口が減少した結果、生産性の低い土地(主として農業収入の少ない土地)は見捨てられ、人口は効率の良い産業に集中した。

このため、賃金と穀物の比価が変わり、エンゲル係数が下がった。

人々の暮らしには余裕が生じ、工芸品を買い求める人が増えた。 各種のお祭りが派手になり、教会への寄付も増えた。

これによって手工業が発展し、娯楽を生み出した。

ダビンチやミケランジェロの芸術が生まれたのも上記の結果である。 

まさにルネッサンスの文化が花開いたのである。

 

物事には必ず2面性がある。日本にとって高齢化による不利な面もあるが、有利な面も当然ある。どちらに注目するべきか、当然、楽観的な面に光を当てその方向に思考を向ければ、ビジネス、日常生活、子供の教育、投資、その他あらゆる面で新しい工夫が芽生えてくるに違いない。

 

高齢化のメリットの一つとしてこんなことも考えられる。

人生50年が人生75年に延びたとする。一人の人生が1.5倍になるわけである。

この人が生まれてから成長し、教育を受け、一人前になるまでに25年かかるとする。

人生50年の場合は残りの有効寿命は25年しかないが、人生75年なら有効寿命は50年あることになる。別の言い方をすれば、一人前に成長するまでに要した投資効果は2倍になるわけである。

 日本の総人口が減ることも問題視されているが、日本の人口が1億人を超えたのは第2次大戦後であり、わずか50年ほど前は1億人に達しなかったのだから、現在の1億2千万人が1億人に減少しても、全く驚くに値しないことである。