自動車の怖さ1999.8)

10秒間の「わき見」が許されない 人間は長時間運転に集中できない 年間一万人の死者と80万人の怪我人 毎年確実に死ぬ 宝くじよりも車で死ぬ確率の方が高い 1トンを超える大石が時速100キロでびゅんびゅんと飛ぶ 危険と非効率

 

車は楽しく快適である。 自分の望む所へ望む時間に高速で移動できる。 駐車場と交通渋滞の問題さえなければこんな便利なものはない 。 若者が熱中するのも無理はない。

しかし一方、車ほど危険な乗物はないと言う事実を十分に理解していない様に思われる。 他の乗物、例えば電車、飛行機、船と比べて、どれだけ危険かを考えてほしい。

それらの乗物と自動車との決定的な違いは、自動車の運転性にある。 自動車は止まっている状態から動き出して自由に移動し、最終的に停車するまでの間、即ち運転中は常に注意を継続していなければならない。 運転中たった10秒間であっても目を閉じていれば必ず事故となる。 運転中はその時間が30分であっても3時間であってもたった10秒間の「わき見」が許されない

これに対して他の乗物はスタート時とストップ時の短い期間だけ、しっかりした注意を怠らなければ、それ以外の時間は少々の「わき見」は許される。 電車は駅を離れて通常運転に入ってしまえば、飛行機は離陸して雲の上に出てしまえば、船は岸壁を離れて洋上に出てしまえば、どれも10秒や20秒場合によっては10分でも20分でも「わき見」をしていても、必ず事故に繋がると言うことはない。 これが自動車との大きな相違である。 人間は機械ではないから長時間運転に集中し続けることはできない。 つい横見をしたり、余計なことを考えたり、運転以外のことに注意を取られがちである。 それが車の場合は即事故に繋がる

その結果が年間一万人の死者と80万人の怪我人である。 しかもこれはある特定の一年間だけの数字ではなく毎年毎年これだけの人が確実に死に、傷付いていく。 地震、火山の噴火、台風、など自然の災害も恐い。 しかしこんなに多くの人が毎年確実に死ぬような天災はない。

一年間に1千万円以上の宝くじに当たる人は7千人いると聞いた。 人はいつか自分にも当たるのではないかと期待して宝くじを買う。 しかし、車に当たって死ぬのは誰かよその人で自分ではないと思ってしまう。 実際には宝くじに当たるよりも車で死ぬ確率の方が高いのに

運転中に注意を欠いた車は、石や鉄の塊と同じである。 1トンを超える大石が時速100キロでびゅんびゅんと飛ぶように転がっている様なものである。

更にもう一つ付け加えれば、車は60キロの人一人を運ぶのに1トンの車体を同時に運ばねばならない。 これもまた、車が持つ大きな無駄と非効率の一面である。

車はその便利さの影に、そんな危険と非効率を合わせ持っていることを見逃してはならない。