マラソン選手と断食(1998.12)

 競技の当日にスタミナいっぱいの状態に持ってくる 断食をする 体を一時的に苦しめて吸収力を高める いつも十分に水をやっていると植物は怠けて吸水力が衰える 苦労があって鍛えられた人間は強くなる

 

 友人の一人にマラソンを趣味にしている人がいる。 彼がこんなことを私に話してくれた。
 「マラソンは如何にして自分の体を競技の当日にスタミナいっぱいの状態に持ってくる様に調整するかが勝負である。 そのため競技日の数日前に一度断食をする すると体がこのままでは死んでしまうので、何とか栄養分を取り込もうと必死になる。 体がそんな状態になった時に、断食を中止して少しづつ食事を取るようにすると、栄養分が十分体に貯えられる。 そのように栄養分が十分体内に貯えられ、スタミナがいっぱいの状態になった時に競技当日を迎えられる様に持っていくのが調整である。 要は体を一時的に苦しめてやることによって、吸収力を高めるのだ」
と言う。

 植物も同じような現象がある。 いつも十分に水をやっていると、植物は怠けて(或いは油断して)吸水力が衰える ところが、水をやらずに何日もほっておくと、植物はこのままでは枯れてしまうと思って、吸水力を高める。 そのままいつまでも水をやらないと本当に枯れてしまうが、枯れそうになる前の吸水力が高まった時点でたっぷり水をやると、植物は急いで十分に水を吸おうとするので、潅水の効果が大きくなる。

 貧乏人は子沢山と言うが、これも上の例と同じで、いつも食うや食わづの死にそうな生活をしていると、その人間の体の遺伝子は、このまま死んでしまうと子孫が絶えてしまうので、何とか死ぬ前に子供を残しておこうとして、自然に生殖能力を高めるのである。 その反対に、いつも栄養の豊富な食事を取っていると、遺伝子は油断して(或いは怠けて)子孫を残す努力をしようとせず、生殖能力が弱くなる。

 何事も同じで、苦労をしない動物は弱くなり、少しでも環境が変化すると滅びるが、苦労をしている動物は鍛えられて強くなり、少々の環境悪化にも絶えられるようになる。

 動物だけでなく植物も、勿論人間も全く同じである。 会社でも家庭でも、苦労があって鍛えられた人間は強くなり、その苦労を乗り越える力を身に付けていく。