Money Changer(両替商人)2000.6)

4ヶ月で35%も値下がり 目の前で数えると金額が足りない 両替手数料 東京駅に匹敵する場所でインチキ 受取るべき金額を予め計算 その場で金額確認 日本語でも良いから文句を言う 正当なクレームは遠慮せずに

 

日本国内では余り見かけないが海外へ出ると両替屋が街のそこここで見られる。 この商売人がなかなかの曲者が多い。

その1 バリ島の両替商(インドネシア)

この島の唯一の産業が観光であることから、観光客の集まる繁華街に行けば、いたる所に両替商の看板が見られる。 たまたま私がここを訪れた時(1997年12月)、この国の経済が大混乱していた時期であった。 空港へ到着した時、1アメリカドルが3800ルピア(ルピアはこの国の通貨単位)であった。 早速空港で、当座の使用の為に現地通貨に両替することにした。

たまたま同じ両替窓口に並んでいた日本人が「4ヶ月前には2500ルピアだったのに、今日は3800貰える」と言って喜んでいた。 僅か4ヶ月でルピアは35%も値下がりしたことになるが、我々外国人の観光客に取ってはそれだけドルや円の値打ちが上がったことになり有り難い。 クレジットカードが使えるので、取合えず当座必要分の両替をして空港からホテルに向かう。

街の商店街にも多くの両替商があり、各国通貨毎の交換レートを黒板に書いて店の前に出している。 さる土産物屋の看板に有利なレートが表示されていたので、試しに入って見る。 両替を頼むと店の主人とおぼしき「おっさん」がパスポートを見せろと言う。 私の身元を確認するためだ。 パスポートを示し、日本円を渡すと現地通貨(ルピア)をくれる。 早速おっさんの目の前で数えるとかなり金額が足りない。 「足りない」と云ってルピア札を突き返すと、しぶしぶ受取って、別の札束から勘定して差し出す。

今度は枚数は確かに増えているのだが、良く見ると小額紙幣ばかりで、やはり金額が足りない。 もう一度「足りない」と云って突き返す。 しぶしぶ受取って別の札束から勘定して差し出す。 数えて見ると3度目の正直で、今度は正しい金額で有ることが確認できたが、こちらはもう1度「まだ足りない」と云って突き返してやった。

今度はおっさん一瞬怯む姿勢を見せたが、直ぐに元の表情に戻って「そんなことはない。 もう1度数えて見ろ」と云い返す。 こちらはしぶしぶ数えなおして、「OK」と札をポケットにしまう。 しかし、ここでは両替手数料を取られたので、結果的には特に有利なレートではなかった。

その後注意して両替の看板を見てみると「手数料なし」と書いてある所と手数料のことは何も書いていない所があることが分かった。 次の日には、写真焼付けの店(富士フィルムの代理店)で試してみた。 ここは女の子の店員が事務的に対応し、レートは少々悪かったが先日のおっさんの様な掛け引きもないし、手数料も取られなかったので、結果的には土産物屋とほぼ同じ手取り金額で安心できる店であった。

結局、4ヶ月前の1ドル2500ルピアが、入国時には3800ルピアとなり、10日足らずの滞在中に4500〜5000ルピアになり、更に帰国後1月程してクレジットカードで支払った買い物の請求が来た時には9000ルピアにまで下落していた。 これならクレジットカードでもっと買い物をしておけば良かったと後で冗談を言ったほど激しい為替変動であった。 現地の人にとっては本当に悲劇であったろうと思う。

 

その2 ローマのテルミナ駅の両替窓口(イタリア)

 ローマ中央駅の構内にも両替所がある。 ここで日本円を現地通貨(リラ)に替えてもらったことがある。 円を渡すと計算機らしい機械の釦を操作した後リラの札をくれた。 窓口のおっさん(ここも50才前後のおっさんだった)の目の前で数えて見るとどうも予想枚数より少ない。 「足りない」と言って突き返すと、おっさんはそれを一旦脇へ寄せて、改めて計算機をたたき直し、お札と交換レートをタイプした伝票を一緒にして差し出してきた。 そう言えばさっきはこの伝票がなかった。 数えて見ると今度は正しい金額である。 

日本人の感覚から言えば、JR東京駅の構内に匹敵する場所で、こんなインチキがあるとは予想できないのだが、それが現実にはあると言うことだ。 当然私以外の多くの日本人が引っかかっているに違いない。 敵は「また日本人の鴨が来た」と思ったのだろうが、そう何時も騙されてばかりいるわけにはいかない。 

以上の2例から幾つかのことが言える。

@予め自分が受取るべき金額を概算でも良いから計算しておく。 特にインドネシア、イタリア、メキシコなどの様に日本円から現地通貨に交換した時、何倍も、時には何十倍も数字が大きくなる時は要注意である。

A正規の両替所では必ず計算書の伝票をくれる。 これがない所は特に注意。

Bその場で金額確認し、予め計算した金額より少ない時は、即座に突き返す。 一旦その場を離れたり、お金を財布やポケットにいれてからでは文句は言えない。

Cおかしいと思ったら遠慮せずに日本語でも良いから文句を言う。 「日本語は通じないだろう」などと相手のことに配慮する必要は全くない。 相手もこちらのことに気を使ってくれる様な人間ではないのだから。 日本語であっても文句を言えば、こちらが怒っていることくらいは十分相手に伝わる。

D現金、カード、TC(小切手)のどれが有利か、国によって異なるので確認する。 大きな金額を現地通貨に替えるのはトラブルの元になり、推奨できない。 カードの方が安心だ。 カードならカード会社からの請求書をゆっくりチェックしてから、不具合があれば、支払を差し止めることもできるので、十分確認する時間がとれる。

 E両替に限らず、正当なクレームは遠慮せずに付けよう。 日本人どうしならホテルのロビーやレストランで賑やかに話しているのに、クレームになると口をつぐむ。 日本語でも良いからはっきりと言おう。 さもないと、なめられるだけでなく日本人全体が馬鹿にされるだけである。