日露戦争勝利の教訓2005.7)

国内世論の指導 日英同盟 革命工作 終戦工作 資金工作 軍事工作 後方霍乱 孫子の兵法 敵を知り己を知れば百戦して危うからず

 

日本はかつてロシアと戦争をした。 その当時、ロシアは大国であり、日本は極東の小国であった。 世界の大多数は日本がロシアに勝てるとは思っていなかった。 ロシアは日露戦争に先立ち、ナポレオンの侵入に勝ち、後にはヒトラーにも屈しなかった。 そのロシアが何故日本に負けたか。

東郷平八郎率いる日本の連合艦隊とロシアのバルチック艦隊との日本海海戦における日本海軍の勝利のみが勝因として広く知られているが、決して日本海海戦だけで日本がロシアを下したのではない。

 

日本勝利の原因は以下の7点に要約されると言われている。

(1)国内世論の指導(国民世論が一致団結して日本軍を支持した)

(2)日英同盟(ロシアの抑制にはイギリスもメリットがあり、イギリスも日本を支援した)

(3)革命工作(当時ロシア共産党が進めていた革命運動を、日本も間接的に支援した)

(4)終戦工作(日米間の人脈を通じて、アメリカ大統領に早期の終戦を働きかけさせた)

(5)資金工作(ヨーロッパの資金をロシアに流さず、日本へ流すように仕向けた)

(6)軍事工作(日本海海戦の勝利 旅順陥落)

(7)   後方霍乱(極東ロシア陸軍の輸送線路を破壊し、戦力を弱めさせた)

 

勝利を目指して、あらゆる方策を試みたのである。 それに較べて第2次世界大戦の日本軍部は何と視野が狭かったことか。 幾つかの事例を挙げよう。

 

米英鬼畜論:

米英を鬼畜であると称して、国民の冷静な判断を誤らせた。

 

英語敵国語論:

英語は敵の話す言葉だから、それを勉強するのは非国民だと言ってやらせなかった。 米国は逆に、日本語研究者を増やして、敵情を知ろうとしていた。

 

神風論:

「日本は神国であり、その内神風が吹いて必ず日本が勝利する」などと、全く根拠のない説を唱えていた。 何の関係もない「弘安の役の蒙古襲来」時に偶然発生した台風を頼りにしている。

 

一億玉砕論:

天皇を守り抜くため、全国民が死ぬまで戦えと言う。 国民が全滅してどうして天皇制が成り立つのか、全く矛盾することを言う。

 

竹槍でB29を撃墜する:

1万メートルの上空を飛ぶB29(アメリカの大型爆撃機)を長さ2メートルの竹やりでやっつけろと言う(実際にはB29が落ちてきたら、竹やりで乗員を刺すと言う意味か)。

 

日本軍でも士官学校で孫子の兵法を教えていたと言う。 ここでは有名な「敵を知り、己を知れば、百戦して危うからず」、と書かれていたはずである。 それを読んでもそれを活かせていない。 冷静に戦略を考える謙虚さを失っていたのであろう。 それが結果的に国民に大きな犠牲を強いてしまった。 この貴重な教訓を決して無駄にしてはいけない。

大きく目を開いて世界を見、耳を澄まして広く情報を集め、根拠のない大言壮語は慎み、冷静に、戦略的に判断をしなければならない。