怒る前に10数えよ (1999/7)

真っ白だった頭の中も少しは冷静さを取り戻せる 憤怒から得るものは何もない

 

宮使え(サラリーマン生活)を長くしていると、本当に頭に来る様なことが何度かある。 これはサラリーマンなら(サラリーマンでなくても総ての人に言えることだが)誰でも経験していることだと思う。 そんな時、声を荒げて怒り出す前に、いち、にー、さん、し、と十まで数える努力をしてほしい。 その間に少しは気も落ち着き、真っ白だった頭の中も少しは冷静さを取り戻せるはずだ。

私もこれを心がけたお陰で、会社生活の中では、声を荒げるようなことは、数年間に一度程度に押さえられたと思う(その分、家庭内では辛抱できず、ついつい怒鳴ることが多かったが)。 だから私の怒った顔を見たことのある人は、職場ではごく少数であろう。

私の職場に短気でよく怒り出す人がいた。 その人に一度この話をしたことがある。 私より10歳近く年上だったが、立場上私が上にいたこともあって、彼が冷静な時に私の体験談として十数えることを話した。 その時は彼は何も言わずに、黙って私の話を聞いただけであった。

その後少しして彼は職場を変わり、お互いに顔を合わすことも少なくなった。

10年以上も経ってから、たまたま懇親会か何かの席で彼と顔を合わせる機会があった時、彼は私にしみじみ言ったものだ。 「あなたに十数えることを教えてもらって、本当に感謝している」と。 殆ど忘れかけていた昔の話をやっと思い出しながら、本当に良かったなあと、私も思ったものだ。 人間なかなか自分の感情をコントロールすることは難しいが、「憤怒から得るものは何もない」とは、昔から変わらぬ真実であろう。