レンガを運ぶ人(Missionを掲げる)1999.1)

自分の好きなことをしていると不平は言わない 強制されて働く時は直ぐに疲れて辛いと感じる 「私はレンガを運んでいます」 「私は私たちの教会を建てています」 使命感(mission)を掲げて一つの目的に向かって仕事をする

 

 人間は面白いもので、自分の好きなことをしていると、しんどいことをしても不平は言わないし、疲れても辛いとは思わない。 その一方、自分の気に入らないことをしていると、たいしたことでもないのに、直ぐにしんどいと不平を言う。

釣りの好きな人は、夜中に起きて釣り場に出かけても、眠たいと文句は言わない。 同じ人が、好きでもないゴルフに付き合わされて、早朝に出かけなければならないとなると、なんでこんな朝早くから出かけるのか眠いのに、と不平を言う。

人は他人から強制されて働く時は、直ぐに疲れて辛い労働と感じるし、自分の意志で自発的に働く時は力も出るし、能力も目一杯発揮される。 一時間何円、一日いくら、の時間制で働く人より、成果に応じて報酬の多寡が決められる人の方が一般的に熱心に働く。

しかし、人はお金のためだけに働くよりも、はっきりとした目的意識や使命感を持って働く時にこそ、最大の能力を発揮するし、より能動的に、より良い仕事をしようと心がける。

昔ある旅人が道を歩いていると、二人の作業者がレンガを運んでいた。 一人は疲れた様子でしんどそうにレンガを運んでいる。 もう一人の作業者は疲れた様子も見せず楽しそうにレンガを運んでいる。 そこで旅人は疲れた方の作業者に尋ねた、「あなたは何をしているのですか」。 その作業者は答えた、「私はレンガを運んでいます」と。 旅人はもう一人の楽しそうにしている作業者に尋ねた、「あなたは何をしているのですか」。 その作業者は答えた、「私は私たちの教会を建てています」と。

人は唯目的もなく重いレンガを運んでいる時は疲れ、自分達の目的を達成しようとしてレンガを運ぶ時は疲れを感じない。 レンガを運ぶと言う単純作業においてもこれだけの差が出る。 増してや、より高度な知的作業においては、その成果の差は格段に大きなものとなる。

あの立派なエジプトのピラミッドを建設した設計者や作業者達は、鞭で使役される人達ではなく、宗教的な使命感を持った人達であったに違いないと思う。

共通の使命感(Mission)を掲げて、一つの目的に向かって仕事をしている集団(会社や団体)と、唯何となく働いている集団とでは、その成果に大きな差が生じる。 その集団の構成員の満足度にも大きな差が生じる。 我々も前者の立場に立ちたいものである。