ローマ字のサイン(Signature)1999.9)

ローマ字のサイン 氏名を書く順序 KDDとNTT 自分の国にプライドを持つ

 

最近はハンコに代わってサインをすることが多くなった。 サインと言うと日本人はローマ字で書く人が多い。 旅行や出張で海外へ出る機会も多くなったが、その際サインを求められると大部分の人がローマ字のサインをする。 サインと言うものは自分を表わす「しるし」であるから、本来丸でも三角でも何でも良いのである。 ただ、丸や三角だと単純過ぎて他人に真似られる恐れがあるため、これを防ぐ工夫と、手短かに書けるようにとして名前を崩したりして使っているわけである。

日本人の場合は漢字のほうが書き慣れている上、真似をされる危険を避けるためにも、漢字のほうが絶対に有利である。 にもかかわらずローマ字を使うのは、明らかに外国人の真似である。 もっと言えば欧米人に対する無意識の劣等感または外国かぶれとしか言いようがない。 アメリカへ行けばアメリカ人の真似をしなければいけないと思っている。

氏名を書く順序も名前を先にし名字を後に書く、そんなことをする必要は全くない。 日本人は名字が先で名前が後にくるのが正しい習慣であり、外国へ出たからと言って反対にする必要はない。 現に我々も日本で外国人を呼ぶ場合、例えば、ジョージ ワシントン、とか ウインストン チャーチルと言うではないか。 誰もワシントン ジョージ とか チャーチル ウインストン などと言わない。 欧米人が欧米流で言う様に日本人は当然日本流に言うのが正しい。 それが例え海外においてもである。

会社の略字でも似たような現象が見られる。 国際電信電話株式会社はKDDKokusai Densin Denwa)と日本名のままだが、日本電信電話株式会社はNTT(Nippon Telegraph and Telephone)と英語(日本はNipponのまま)に訳している。 日本郵船株式会社はNYK(Nippon Yuusen Kaisha)、日本放送協会はNHK(Nippon Housou kyoukai)と日本名のままであり、日本電気株式会社はNEC(Nippon Electric Company)、日本航空株式会社はJAL(Japan Air Line)と英語に訳している。

どちらが良いとは一概に言えないが、第2次世界大戦の勃発より以前から世界に雄飛していた会社は、日本語をそのまま使い、第2次世界大戦での敗戦後に世界に進出した会社は英語に訳している傾向がある。 戦前の日本人の方が世界の常識(固有名詞は訳さずに使う)を心得ていたのか、或いは、自分の国にプライドを持っていたと言えるのではないか。 まさか海外出張でここは外国だからと言って、自分の名前を Wood village(木村)や、Mountain book (山本)、Bell wood(鈴木)などと訳す人はいないはずだ。