生命保険1999.8)

掛け捨て方式と積み立て方式 1年間無事に過ごせば神様に感謝

 

若い人から年配者まで、日本人の大半が生命保険に加入している。 学校を卒業して会社へ入ると、生命保険の女性外務員が新入社員に保険を熱心に勧誘しにくる。 生命保険には掛け捨て方式と積み立て方式がある。 ところが、大部分の人は積み立て方式に加入する。 その理由の第一は外務員がその方式だけしか説明しないことだ。 掛け捨て方式では同じ保険金額でも、毎月の支払料金が大幅に少ないから、保険会社としては甘みが少ないからである。 裏返して言えば、保険会社(向こう側)としてうま味が少ないと言うことは、加入者(こちら側)にとって有利と言うことになる。

第2の理由は、大抵の人が掛け捨て方式の保険(1年契約で毎年更新するケースが多い)に加入しても1年以内に自分が死ぬとは想像していないので(本当は何時死ぬか、それが分からないから保険に入るのだが)、1年後に掛け金が返ってこないと損をしたような気がして、長期の積み立て方式に入ってしまうことになる。 30年満期と言われるとその間に死ぬかも知れないと思ってしまい、結局保険屋の言う通りにしてしまうわけだ。

ところが、実際には30年前に加入した保険が満期になり積立金を貰った人など世の中にはほとんどいない。 何故かと言えば30年の間にインフレが進み、且つ所得水準が大幅に上昇したので、30年前の保険金(死亡時で30万円とか100万円とかが多い)など低すぎて保険の意味がなくなり、保険屋に言われるままに途中解約して保険金額を大幅(死亡時で1000万円とか2000万円とか)に嵩上げした新規の保険に加入させられているのである。

結局のところ、給料も物価も安かった時に高い保険料(その当時では価値ある金額)を払い、何10年後かに大きく目減りしてしまったわけだ。 誰が得をし、誰が損をしたかは明白だ。 本来生命保険は1年毎の掛け捨て方式に入り、その年1年間無事に過ごせれば、神様有り難うございましたと感謝すれば良いのである。 それを無事に過ごせたのに掛け捨ての保険金が惜しいと助平根性を起こすから、結局保険屋の思う壷に嵌まってしまうことになる。 何事もある時点で割り切ることが大切だ。