淘汰される銀行2000.5)

ベンチャー企業設立 駄目な理由を聞かせて欲しい ごく最近までは銀行の力は絶大 絶対安全と思っていた銀行も油断すると潰る 環境の変化 ぬるま湯の中の蛙

 

世間はベンチャー、ベンチャーとかまびすしい。 既に自分でベンチャー企業を立上げた人もいるだろうし、これから立ち上げようと考えている人もいるだろう。 そうなると、嫌でも銀行との付き合いが出てくることになる。 

発起人が集まって(一人の場合もあるが)会社の設立を決議し、夫々の分担に応じて、出資金の払込をすることになる。 その際、どこかの銀行に依頼して出資金を一時保管してもらわなければならない。 その上で銀行の「出資金保管証明書」を添付して、法務局へ会社の登記を申請することになる。

その保管業務に関して銀行との間でこんなことがあった。 以前から口座のあった銀行に出向き、担当の中年行員に口頭で出資金の保管を申込みをした。 その担当行員が「多分OK」です、ということなので、書類を作成し、正式申込みをした。 同じ行員が「多分OKです。 正式には審査の上ご連絡します」、と書類を受け付けてくれた。 ところが数日経って、その行員から電話が入り、「審査の結果、上司のOKが得られないので、保管業務をお断りします。 提出した書類を取りに来て下さい」と連絡して来た。 理由を尋ねると「上から理由は聞かされていないので、不明」だと云う。

 「提出書類は取りに行くが、だめならだめでもよいから、理由を聞かせて欲しい」と言うことで一旦電話は切り、当の銀行へ出かけて行った。 担当行員に合い、「書類を作成し直して他の銀行へ行っても、同じ理由でまたNOになると困るので、駄目な理由を聞かせて欲しい」と申し入れた。 担当行員は「自分はOKで上申したが、理由は聞かされていない。 支店長か次長の段階でNOになった」と言う。 それなら、支店長か次長に合わせて欲しいと申し入れ、次長に合うことになった。

担当者に2度事前確認して多分OKの回答を得ていたこと。 必ずしも同銀行に拘らないが理由だけは聞かせて欲しいことを述べた。

次長、「初めての取引で実績がない」

当方「これから立ち上げる会社だから実績がないのは当たり前。 昨年有限会社を立ち上げた時は初めてでもOKしてもらった」

次長「その時は個人の実績があった。今回は個人ではなく会社名の申込みだからだめ」

当方「会社名でも1年間の実績がある」

次長「定款を見るとインターネットに関連する仕事をすることになっているが、ネット関係は内容のはっきりしない会社が多いのでNOになったと思う」

当方「貴行自身ネットバンキングの宣伝をして、インターネットを奨励しているのに、インターネット関連の業務が駄目というのは全くおかしい。 だめならだめで良いのではっきりした理由を聞かせて欲しい」

次長「代理人と代表者の関係が良く分からない」

当方「発起人が3人おり、私はその3人の代表で、他の2人の代理となって諸々の手続きしている。 提出している委任状に記載の通りである」

次長「1日時間を貸して欲しい。 改めて回答したい」

当方「了解しました」 

 この間約3、40分、お茶も出ず、次長の話がだんだん訳のわからないものになっていく。

一旦引き上げたが、1時間程後に次長から電話があり、

次長「新しい会社の代表者は誰か」

当方「私だ。提出した定款にも書いてある」

次長「出資金の払込みは4月24日か」

当方「貴行のNOの回答で中断し24日は過ぎてしまった」

次長「いつにすれば良いか」

当方「連休になるので、休日開けの5月8日から15日の間にして欲しい」

次長「了解した。 もう一度審査をやり直したい。 2,3日かかる。 その結果は担当者から連絡する」

当方「了解 宜しくお願いします」

 再審査の結果、保管業務の申請はOKになった。

 上記は田舎の小銀行のはなしではない。 大手都市銀行の大支店での話しである。 後日、別のルートから聞くと、この次長は最近神戸へ転勤になって、未だ1年経っていなかったそうだ。 事務処理を良く理解していなかったのではないかと思われる。 分からないまま適当なことを云って、追い返せば済むと考えていたのだろう。 確かに、ごく最近までは銀行の力は絶大で、長年銀行の言うことはご無理ごもっともで何でも通っていたのだろう。 最近かなり事情が変わってきている。 絶対安全と思っていた銀行が、大手中小に限らず油断すると潰れたり、他行に吸収されたりする様になって来ている。 

 人間同じ環境の中に長くいると環境の変化が見えなくなったり、見えてもどう対応して行けば良いのか分からなくなるものである。 

 こんな話を聞いたことがある人もいるだろう。

 鍋に水を入れ火にかける。 少し経って熱くなったお湯に「蛙」を投げ込むと蛙は慌てて飛び出して逃げ出す。 一方、同じ鍋に水を入れ、その中に初めから蛙を入れて火にかける。 少しづつ温度を上げて行くと、蛙はゆで上がって死んでしまうと云う。 この話、私も試した訳ではなく、眉唾ものであるが、何となく理解できる面白い例え話ではないか。 人間も長くぬるま湯に浸かっていると、抜け出せないか、抜け出しても風邪をひいて寝込んでしまうことになるようだ。