レンガ コンクリート(1998.11)

一国一城の主 自分が納得すれば一番良い城 木は伐採された時から少しづつ強度が増す 樹液は乾燥し難いが水は速く乾燥する レンガは数千年の耐久性 新しいレンガより古いレンガの方が高価

 

自分の家を持ちたい(建てたい)と考える様になる時期がある。 小さいながらも一国一城の主である。 自分にも一つの存在感が出てきたことの現われかも知れない。 一つの大きな目標にもなり、仕事にも張りが出てくるだろう。 その際どんな城を持つか、いろいろと考えて見るのも一興である。

持ち家にするのか、借家でいくのか、マンションにするか、一戸建てにするか、郊外が良いか都心が良いか、大きな選択だ。 自分の住む家をどんな形のものにするかは、その人個人の人生観に関わることであり、何が良いかは一概に言えない。 要は自分が納得すればそれが一番良い城であるわけだから。 しかし、家は一生の中でも一番大きな買い物の一つだから、慎重にじっくり考えるに超したことはない。 その前提の一つとして家の主要材料について少し考えて見たい。

家の材料には大きく分けて、木、石、レンガ、鉄、コンクリートなどがある。 日本では木の家が圧倒的に多い。 木は弱い、耐久性がないと思われているが、必ずしもそうではない。 十分に乾燥された木は数百年も持つ。 最高の事例は奈良の法隆寺で、建設後1300年経っている。 一般に木は伐採された時から乾燥して少しづつ強度が増すと言われている。 例えば、樹齢600年の木は伐採後600年間にわたって少しづつ強度がアップし、樹齢と同じ年数が経過した時点で最高の強度となり、その後少しづつ弱くなって行き600年後に伐採時の強度に戻り、その後も少しづつ強度が落ちて行く。 法隆寺は別格にしても木の強度は立派なものである。

ついでに書くと、今の日本では材木は山から来るより海から来る方が多い。 即ち輸入木材である。 輸入木材の貯木場へ行くと、木を水に浮かせているのをよく見掛ける。 こんなことをすると乾燥し難いように思うがそうではない。 木は水に浸けておくと樹液が抜けて水と入れ替わる。 樹液は乾燥し難いが水は速く乾燥する 従って、樹液を含んだまま乾燥させるより、水に置き換えてから乾燥する方が結果的に短期間で乾燥する。

木と共に建材として古くから使われているのが石である。 日本では殆ど使われないがヨーロッパや中近東、インドなどでは良く使われている。 良い石材が産出したからであろう。 石の耐久性は数千年に及び殆ど永久的と言える。 石は種類も多く、大理石のように鉄製の刃物(ノミやナイフ)で容易に削れるものから、叩くとキンキンと金属音のする硬いものまでいろいろあって面白い。 石の色や模様も興味を持って見ると随分と変化に富んでいる。 白、赤、紫、ピンク、黄、青 ・ ・ ・  と実に千差万別で、中にはうっすらと光りを通す石さえある。色石や石の地模様はなかなか味わいがある。

レンガも石と共に古くから使用されてきた。 レンガそのものは数千年の耐久性を持つが、残念ながらレンガとレンガを接着するモルタルやシックイがそれ程長持ちしないために、数百年も経つとレンガが剥がれ落ちてくる。 イタリアや中近東の遺跡に見られるのは石とこのレンガが多い。 しかし、石よりもレンガの方が一般的に小型で軽量のため、再利用され易くヨーロッパやインドでは、しばしば古い建物を取り壊した時のレンガを新しい建物用に利用しているのが見られる。 イギリスでは新しいレンガより古いレンガの方が高価であると、地元の人から聞いたことがある。

鉄とコンクリートは丈夫な様に思われているが、たかだか100年か200年もてば良い方で、鉄などは表面処理(塗装)をこまめにしないと直ぐに錆びて耐久性を無くしてしまう。 コンクリートも同じで案外脆くて弱い建材だ。 それに建材としての歴史も浅く、あまり信頼できるものではない。 何と言っても木や石など自然の建材にはまだまだ及ばない